Omagatoki | SC-2011 | JPN | 1986 | M: VG+ / VG+ | JK: VG
A1: 雪の冬
A2: かけっこ
A3: たんぽぽ
A4: 海を越えて
A5: 旅立ちのとき
B1: 春蘭
B2: 波の音が聞こえるかい
B3: 夕焼け
B4: ダラ(月)
Far East Family Band のベーシストとして知られる 深草アキ が、中国の古典楽器 秦琴 と出会い、その響きを軸に作り上げた86年作。和や中国音楽の要素を下敷きにしながら、作品自体は伝統音楽の再現というより、当時のニューエイジや国産アンビエント、民族音楽的な感覚を通して組み立てられた、かなり個性的なクロスオーヴァー作品です。編成にはシンセサイザーや各種パーカッションも加わり、素朴な弦の響きと現代的な音作りが無理なく混ざり合うのが特徴です。
エスニックな作品にありがちな装飾的な雰囲気作りに寄りかからず、音のひとつひとつにきちんと感情の重みがあるところが聴きどころ。秦琴の乾いた撥弦は、民俗的な手触りを残しながらもどこか抽象的で、そこへシンセや金物、ケーナ、タブラ、ハンドクラップが交わることで、土地に根ざした音楽というより記憶や気配のような世界が立ち上がってきます。叙情的ではあるのに甘さへ流れず、むしろ静かに張りつめたまま進んでいく感じがあります。ニューエイジ的な心地よさは確かにあるのですが、それが安らぎというより時間の移ろいや消えていくものへの感覚に結びついています。
そのため本作は、和モノや民族音楽、ニューエイジのどれかひとつの文脈だけでは少し収まりきりません。80年代の日本で、アジアの弦楽器を用いながら内省的で現代的な音楽をどう作るか、その試みがとても自然な形で結実している1枚です。派手さはないのに、聴き終えたあと妙に感情が残る。深草アキの音楽家としての感覚の細やかさが、静かに染みてくる作品だと思います。日本盤。
Sleeve: 薄くスレ/クスミ
Media: 薄くスレ/静音部に軽微なチリノイズ/B2に小さくキズ(試聴参照)
Include: 帯(スレ)/ライナー