Idut | ILP 891 | FRA | 1989 | M: VG+ / VG+ | JK: VG | ゲートフォールドスリーヴ
A1: Gula Gula 3:40
A2: Vilges Suola 4:15
A3: Balu Badjel Go Vuoittán 4:00
A4: Du Lahka 5:14
B1: It Šat Duolmma Mu 3:48
B2: Eadnán Bákti 3:17
B3: Oppskrift For Herrefolk 3:54
B4: Duinne 6:27
ノルウェー領サーミ出身のシンガー Mari Boine Persen が、89年にノルウェーの Idut から発表した代表作。のちに Peter Gabriel の Real World から国際流通され、彼女の名を広く知らしめた突破口の1枚でもあります。録音はオスロの Rainbow Studio、プロデュースは Tellef Kvifte。伝統的なサーミの歌唱様式ヨイクを土台にしながら、フォーク、パーカッション、現代的なアレンジを持ち込み、単なる民族音楽紹介では終わらない、はっきりと現在形の作品として作られています。タイトル曲の副題 “Hør Stammødrenes Stemme” は「母祖たちの声を聴け」という意味を持ち、この作品の姿勢をよく表しています。
伝統を保存するための慎ましい再現ではなく、サーミの声や記憶をいまの音として押し出しているところが、まさに肝です。歌は霧のように漂うのではなく、かなり芯が強い。ヨイク由来のうねりや反復はたしかにあるのですが、響きとしてはむしろ緊張感があり、打楽器やベースの動きも含めてかなりフィジカルです。そこに自然観や土地の感覚、さらに抑圧への意識や女性的な視点が重なり、この作品を単なるニューエイジや環境音楽の枠に収めにくくしています。静けさはあるのに、決して従順ではない。そのバランスが非常に見事です。
ワールドミュージックという枠で語られることの多い盤ですが、実際にはその後の越境的なフォークやスピリチュアルな表現のかなり手前で、すでにひとつの完成形を示していた作品と言っていいと思います。異文化色の珍しさではなく、声そのものの強度で残り続ける1枚です。ノルウェー盤。
Sleeve: 薄くスレ
Media: 薄くスレ/静音部に軽微なチリノイズ
Include: ---