Epic | 20・3H-237 | JPN | 1986 | M: VG+ / VG+ | JK: VG+
A1: I'm Not Living (But) I'm Not Dying
A2: Planet Love
A3: Blue-Break-Blue
B1: ジュランディア(願望国)
B2: 雨のEcho
B3: ガラスの部屋
シンガー 大沢誉志幸 が86年に発表した6曲入り作品。80年代日本のポップスの中でも少し説明しにくい位置にある1枚です。シンガーソングライターとしての大沢氏の名前はもちろん前に出てはいますが、実際の手触りは一般的な歌もののアルバムというより、当時の東京の実験的な空気が濃く入り込んだスタジオ作品です。プロデュースは大沢氏自身とホッピー神山。参加メンバーにも Chakra や Killing Time の 板倉文、EP-4 の 川島バナナ、Mich Live こと 沢村満、Real Fish の 矢口博康 らが並び、顔ぶれだけ見てもふつうの歌謡ポップへ素直に着地するつもりがあまり感じられません。
この作品の面白さは“大沢誉志幸のポップス”として聴き始めると、途中から少し志向がずれていくところにあります。マリンバとシンセが無国籍な浮遊感A2「Planet Love」、しっとりと青い色調を帯びたA3「Blue-Break-Blue」、質感の異なる音を幾重にも重ねて深い音場を作るB3「ガラスの部屋」など、楽曲ごとに聴きどころはありつつ、全体を通すと魅力の中心はメロディの強さだけではなく音の置き方や編成の奇妙さにあるのがわかります。ニューウェーヴ以後の感覚、アートポップ的な発想、少し無国籍なサウンド処理が自然に混ざっていて、洗練されているのに落ち着きすぎない感じ。そのため、80年代らしいシャープな音像を持ちながらも、同時にどこか引っかかる、不思議な余白が残ります。
大沢誉志幸は芸能の世界に属しながら、表現の重心がときどきその外側へはみ出していく人ですが、この作品にはその感じがかなりよく出ています。ヒット曲の延長で語るには少し変で、かといって前衛に振り切っているわけでもない。ポップスの形式を保ったまま、その内部に実験性や違和感を持ち込んだ1枚として、80年代半ばの日本語作品の中でもかなり独特。大沢誉志幸のカタログの中でも、器用さより“はみだし方”の面白さが前に出た作品です。
Sleeve: シュリンク付/薄くスレ/ヤケ
Media: 薄くスレ/静音部に薄くチリノイズ
付属品: ハイプステッカー/歌詞カード/アートワーク